薬師寺東塔
フェノロサ(東京美術学校=現東京芸術大学の創立者)に「凍れる音楽」と評されたという、薬師寺の三重塔東塔。裳階を付けた三重の屋根は確かに律動的で、音楽を連想してもおかしくない。しかし、である。今では周りのきらびやかで整備された伽藍の中に埋没してしまって、音楽はもう聴こえてこないように思うのだ。1967年、薬師寺中興の祖、高田好胤師が白鳳伽藍の復興を発願し、写経勧進によって金堂、西塔、中門、回廊を次々に建設、2003年春の大講堂の完成により伽藍は復元された。それは、奈良時代の寺院様式の復元、そして宮大工西岡常一棟梁らによる伝統寺院建築技術の継承という意味においては大変な功績があったわけだが、ぜいたくにも私は、和辻哲郎が訪れたとき(1918年5月)のような薬師寺を見てみたいと思ってしまうのである。岩波文庫版「古寺巡礼」の表紙(入江泰吉撮影)にあるような、西塔の心礎の水たまりに映し出される東塔を。→MAP
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